社説:原発政策 「脱」か「依存」か明確に

毎日新聞 2013年06月30日 02時33分(最終更新 06月30日 23時40分)

 原発に頼らない社会を目指すのか、原発依存に回帰するのか。今度の参院選は、国民がその意思を示す大切な機会になるはずだ。

 福島の事故は、なお収束しない。その中で、政府がなし崩しに依存を強めることがあってはならない。各党・各候補は、有権者がしっかり選択できるよう、自らの原発政策を明確に示すべきだ。

 安倍晋三首相は、原発輸出の「トップセールス」にまい進し、政権の成長戦略には原発再稼働に積極的な姿勢を盛り込んだ。自民党の公約は現政権の姿勢を後追いする内容だ。原発を含むインフラ輸出を進め、原発の再稼働を巡っては、地元自治体の理解を得るよう「国が責任を持って最大限の努力」をするという。

 一方で、昨年の衆院選の公約に掲げていた「原子力に依存しなくてもよい経済・社会構造の確立」という目標は消えた。衆院選で自民に投票した有権者の中には、「依存しなくてもよい」政策の支持者もいただろう。原発依存にかじを切ったのであれば、はっきり示すべきだ。

 連立政権を組む公明党は公約に、「原発に依存しない社会・原発ゼロを目指す」と明記した。自公の政策は矛盾しないのか。国民が支持不支持を判断できるように、両党はきちんと説明する必要がある。

 一方、民主党は「2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入」という衆院選の公約を変えていない。脱原発路線を堅持したことは評価できる。

 しかし、実現のための戦略や道筋が分からない。推進をうたうインフラ輸出に原発が含まれるかどうかも明らかにしない。主張に筋を通さなければ、与党に対抗して有権者の理解を得るのは難しいだろう。

 いずれにしても当面、安全を確認できた原発の再稼働はあり得るだろう。今の制度では、電力会社だけが事故の賠償責任を負う。再稼働させるのであれば、原発を推進してきた国の責任分担の是非もはっきりさせる必要がある。国の責任とは、税金による給付を意味する。賠償負担が大きく膨らんだ東京電力への支援の見直しは、その試金石といえる。

 国民負担を伴うだけに、各党は選挙戦でそれぞれの考えを示してほしい。幕引きを急ぐべき核燃料サイクルや使用済み核燃料の処分などについても考えを聞きたい。

 原発の是非は2年前の原発事故以来、国論を二分してきた難しい問題だ。しかし、それを避けて国の将来は描けない。各党・各候補は原発政策をはっきりと争点に掲げ、論議を戦わせるべきだ。

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