社説:参院選きょう公示 投票こそが政治参加だ

毎日新聞 2013年07月04日 02時30分

 参院選がきょう公示される。第2次安倍内閣半年の評価が問われるとともに、今後数年の政治の方向や枠組みを決める可能性がある位置づけの重い選挙だ。

 安倍晋三首相の掲げる経済政策などが争点で、インターネットによる選挙運動の解禁が注目されている。だが、最近の低投票率傾向の下、国民をひきつける舌戦が展開されるか現状では心もとない。

 与野党は対立点をぼやかさず、内外の課題を直視した論戦を果敢に挑むべきだ。有権者も各党の訴えを吟味し、その選択を21日の投票日に示す責任がある。選挙のスタートにあたり、あえてこの点を強調したい。

 ◇「自民1強」構図を問う

 公示に先立ち行われた9党首討論会では安倍首相に質問が集中した。さきの国会は終盤になるほど論戦に乏しかったが、消費増税をめぐるスタンスや規制改革、憲法問題など幅広い論点が提示された。

 今参院選は与党の自民、公明両党が63議席以上を得て非改選と合わせ参院で過半数を確保できるかが焦点となる。

 衆参の「ねじれ」が解消されれば衆院が解散されない限り与党は約3年政治を主導する安定基盤を得る。自公政権の強化と野党による監視のどちらを優先するかが問われる。

 さきの衆院選以来加速する自民「1強」状況への審判でもある。同党は先月の東京都議選でも圧勝、各種世論調査の支持率も高水準にある。仮に参院で単独過半数に迫るような勢いを示せば内外の政策に加え、憲法問題など自民党色を意識した議論を進める足がかりとなろう。

 一方、衆院選で惨敗し野党に転落した民主党は2大政党の座にとどまれるかの瀬戸際での戦いとなる。

 衆院選で健闘した日本維新の会、みんなの党など第三極勢はその勢いが持続しているかが試される。共産党、生活の党、社民党、みどりの風など他の野党も存在感を発揮する足場を固められるかの正念場である。

 政権そのものを決める衆院選と異なるものの、影響は極めて大きい選挙だ。にもかかわらず、心配なのは国民の政治への関心にかげりがみられることだ。

 昨年12月の衆院選は戦後最低の投票率を更新、さきの都議選も過去2番目の低投票率だった。

 民主党政権の迷走など政権交代可能な2大政党型システムがうまく機能せず、さきの国会も成立寸前の重要法案が廃案になる醜態を演じた。7年続きの首相交代や対立軸のあいまいさなどが有権者の失望、政治離れを生んでいるのではないか。

 かつてわが国は昭和初期に政友会、民政党による2大政党制が混乱し政党政治への不信が強まり、やがて戦争への道を転げ落ちた。この教訓を胸に刻みたい。

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