社説:視点・参院選 女性の活用=論説委員・福本容子

毎日新聞 2013年07月10日 02時30分

 ◇なぜ隗より始めない

 「日本女性の労働参加を、あなたは本当に改善できますか」−−。先月、ロンドンで経済政策について講演した安倍晋三首相は英BBCの記者から質問を受けた。首相は、企業が役員の1人を女性にするよう経済界に要請したことや、自民党の幹部三役の二つに女性を充てたことを挙げ、誇らしげだった。

 ただ、女性首相が何人も誕生し、閣僚や企業役員の4割が女性という国もある欧州である。安倍首相の返答はどれくらいインパクトを与えただろうか。

 日本にも、各分野の指導層を30%以上女性にする、という目標がある。10年前に政府が定めたもので、期限は2020年。国会議員も当然、対象だ。

 だが現状は厳しい。女性議員の比率(下院、日本は衆院)で日本は8・1%と世界123位の情けなさだ。列国議会同盟(IPU、本部ジュネーブ)の調査によるものである。

 そのIPUと国連の共同報告によれば、一定数以上の候補者を女性とするよう義務付けるなどしている国では、女性の当選者比率が何もしていない国の2倍あった。日本もこうしたクオータ制の導入を急ぐべきだ。

 議員のクオータ制は法律がなくても、主要政党に意思さえあれば、実現する。まず、隗(かい)より始めよ、だ。そこで各党の女性候補者数を見てみると−−。

 公示前に参院に議席を持つ政党のうち、今回女性候補が10人以上で、かつ党の全候補に占める比率が3割を超えたのは、みんなの党だけだった。参院選公約に、「20年までに30%」を「確実に達成します」と明記した自民は、11.5%(9人)に過ぎず、過去2回の参院選よりむしろ低い。民主(18.2%)の方が高いが、3割には届かない。

 人口の半数以上が女性で、選挙人名簿登録者数は、女性が男性より約350万人も多い。各党とも、選挙の時は公約に女性受けしそうな言葉を並べる。

 その言葉の本気度を知るための材料になるのが、女性候補への各党の姿勢だ。積極的に人材を見いだし、支援し、育てようとしているか、見定めたい。

 もちろん、女性候補にも高い志が求められる。将来、閣僚や首相に就くことも見据えた息の長い政治活動に励んでほしい。

 南米チリ初の女性大統領となり、今年3月まで国連の新組織UNウィメンの初代事務局長を務めたミチェル・バチェレ氏はかつてこう語った。「女性がフルに、対等に、参加することで民主主義は強くなる」。民主化の遅れた途上国を念頭にした言葉かもしれないが、日本にもあてはまるはずだ。

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