社説:きょう投開票 「お任せ」はやめよう

毎日新聞 2013年07月21日 02時32分

 「けふ(きょう)だ・活(い)かせ一票」「自由な意思で投票を」「傍観は罪悪だ」−−。1946年4月10日、戦後最初の衆院選当日の毎日新聞(東京)1面にはこんな見出しが躍っている。女性が初めて選挙権を得る一方、投票年齢も戦前の25歳以上から20歳以上に引き下げられて初の総選挙。民主国家に生まれ変わる熱気が紙面から伝わってくる。

 それから67年。きょうは第23回参院選の投開票日である。有権者それぞれの1票を大切に、という私たちのメッセージは今も変わらない。

 今回の参院選は基本的には第2次安倍内閣半年の評価を問うものだ。だが、結果次第では参院の与野党勢力は大きく変わり、安倍内閣は久しぶりの長期政権となる可能性が出てくる。ここ数年の日本の方向を決定づけるかもしれないということだ。経済政策だけでなく憲法改正や原発政策など、数年どころか日本の未来を左右する争点が目白押しだったのはだれもが認めるところだろう。

 にもかかわらず低投票率を予想する声が開票前から出ている。昨年12月の衆院選の投票率は戦後最低。先月の東京都議選も低かった。その流れが続くのでは、というわけだ。

 特に懸念されるのは若い世代だ。昨年の衆院選では最も高い60代の投票率が約75%だったのに対し、20代は約38%。深刻な格差といっていいだろう。政治家は投票してくれる高齢者を優遇しがちになる。それでいいのかどうか。若い世代には今一度、考えてもらいたいと思う。

 若者だけではない。「勝敗は既に見えていて関心がわかない」との声もあちこちで聞く。だが、実際には改選議席が2〜5の選挙区を中心に大激戦になっているところも少なくない。やはりあなたの1票が結果を変えるのである。

 「投票したくなる政党がない」という人もいるかもしれない。ならば自分が大切にする政策を一つに絞って、一番自分に近い考えを訴えた政党がどこかで選ぶ方法もある。6年間、参院議員として国政を任すのだから政党より候補者本人を重視して選択するのもよいだろう。

 いずれにしても投票せずに政治家に全てをお任せする「傍観」はいけない。選んだ議員が行う政治の恩恵に浴するのも失政のツケを引き受けることになるのも私たち有権者だからだ。

 冒頭紹介した毎日新聞1面には「憲政の神様」といわれた尾崎行雄の寄稿文も掲載されている。尾崎はこう書いている。「とにかく誠実堅固にして権益のために心を動かさない人を選ぶべきである」「選挙人の責任もまた重い」と。まだ投票を済ませていない人はこの言葉をかみしめながら投票所に足を運ぼう。

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