イメージ政治の時代――毎日新聞×立命館大「インターネットと政治」共同研究



「アベノミクス」避ける ツイッターで自民候補−−毎日新聞・立命館大、ネット共同研究

 衆院選(14日投開票)で安倍晋三首相が争点に位置づけた経済政策「アベノミクス」が自民党候補者のツイッター上の発信(ツイート)ではあまりつぶやかれていない。短文を投稿するツイッターでは各党候補者の発信は街頭演説などの告知が中心になるが、民主、共産などの野党候補は安倍政権の政策批判にも活用。対し自民党候補のツイートは争点への言及を避ける傾向にある。

 毎日新聞と立命館大(西田亮介・特別招聘(しょうへい)准教授)の「インターネットと政治」共同研究では、公示日(2日)までにツイッターアカウントを開設し、8日までに1回以上発信した候補者334人のツイートを収集。小野塚亮・慶応大SFC研究所上席所員の協力を得て、単語を集計・分析した。

 8日までの総ツイート数は1万1570。最も多くつぶやかれたのは「演説」(2869回)。2位以下は「選挙」(2679回)▽「駅」(1887回)−−と続き、街頭演説などの告知が候補者ツイートの中心になっていることがうかがわれる。政策関連の単語は「消費」(429回)が32位、「原発」(403回)が36位に入り、「アベノミクス」(290回)は51位だった。

 「消費」の約6割に当たる267回、「原発」の半数近い195回、「アベノミクス」の94回は共産党候補のツイートで、全体の上位に入っていない「集団」も97回。政党別の候補者ツイート数は同党が自民、民主両党を上回っており、共産党候補がツイッターを積極的に活用して消費増税などの政策批判を展開していることが分かる。

 「アベノミクス」をつぶやいているのは共産党のほか生活の党79回、民主党52回。野党候補がアベノミクスの負の側面を批判しているのに対し、自民党候補は41回しかなく、ツイッター上での論戦に発展していない。民主党候補は「原発」を103回ツイートしている。

 自民党候補のツイートでは政策関連の単語は少なく、「経済」が「アベノミクス」より多い64回、「景気」が38回出てくる程度。世論の賛否が分かれる争点は避ける傾向がうかがえる。【石戸諭、大隈慎吾】

毎日新聞 2014年12月10日 東京朝刊

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西田亮介(にしだ・りょうすけ)
 
立命館大特別招聘准教授(情報社会論)。1983年生まれ。慶應義塾大大学院政策・メディア研究科修士課程修了。同後期博士課程単位取得退学。同助教、東洋大非常勤講師などを経て現職。著書に『ネット選挙—解禁がもたらす日本社会の変容』(東洋経済新報社)、共編著に『「統治」を創造する』(春秋社)。博士(政策・メディア)。
 

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