ネット選挙運動の可否

 インターネットを使った選挙運動が2013年の参院選から解禁された。公示、告示後の選挙期間中にインターネットを使った選挙運動としてできること、できないことをまとめた。

ネット選挙運動の可否一覧

  政党等 候補者 一般の有権者
ウェブサイト ホームページ、ブログ等
SNS(Facebook、Twitter等)
政策動画のネット配信
電子メール 送信 ×
選挙運動用ビラ・ポスターを添付したメールの送信 ×
選挙運動用メールの転送 ×
ウェブサイト上に掲載・電子メールに添付されたビラ・ポスターを紙に印刷して配布 × × ×
ウェブサイト等・電子メールを用いた落選運動
有料インターネット広告 選挙運動用の広告 × × ×
選挙運動用ウェブサイトに直接リンクするバナー広告 × ×
挨拶を目的とする広告 × × ×

 ◇ウェブサイトでできることは

 政党、候補者、一般有権者の誰もが、自分の支持する政党、候補者への投票呼びかけなどの選挙運動ができる。逆に、「○○さんへの投票はやめましょう」などの落選活動をすることもできる。

 ◇転送は不可 リツイートやシェアは可

 パソコンのメールソフト、携帯電話、スマートフォンのメールアプリ、ショートメールのほか、特定のソフトがなくてもブラウザーで送受信できるウェブメールも対象になる。一方、facebook(フェイスブック)、Twitter(ツイッター)の利用者間で送受信するメッセージ、無料通話サービスLINE(ライン)を使ったメッセージ交換は、電子メールには含まれず、ウェブサイトの利用とみなされる。そのため、選挙運動の投稿をツイッターでリツイートしたり、フェイスブックでシェアすることは、一般有権者にも認められるが、電子メールを転送することはできない。

 また、マニフェストやビラを掲載することも認められるが、印刷して配布することは、従来通り、文書の配布や掲示にあたるとして禁じる(公職選挙法142条、143条)。

 ◇「一般有権者」とは

 未成年者、選挙犯罪で公民権が停止されている人、特定公務員を除くすべての日本人を意味する。外国人は選挙権はないが、選挙運動は禁止されていない。

 ◇ネット選挙運動の義務

 ウェブサイトを使う場合、電子メールアドレスなど送信者に連絡可能な情報を表示しなければならない。メールアドレスのほかの具体例として▽返信用フォームのURL▽ツイッターのアカウント名▽連絡先の情報が記載されたウェブサイトへのリンク--など。掲示板の場合は1件ごとに表示する必要がある。

 電子メールの場合は▽選挙運動用の電子メールであること▽メール送信者の氏名や名称▽受信者が、送信拒否できることとその連絡先--の表示を義務付ける。落選運動の場合は、送信者の電子メールアドレス、氏名や名称を表示しなければならない。

 ◇誹謗(ひぼう)中傷・なりすまし対策

 ウェブサイトの連絡先表示義務違反には罰則がないが、電子メールの場合、違反すると、2年以下の禁錮、50万円以下の罰金(公職選挙法243条1項3号の2)が科される。また、氏名等の虚偽表示罪(公職選挙法235条の5)の対象に、インターネットを利用する方法を追加した。

 ほかに、現行の▽虚偽事項公表罪(公職選挙法)▽名誉毀損(きそん)罪(刑法)▽侮辱罪(刑法)▽選挙の自由妨害罪(公職選挙法)▽不正アクセス罪(不正アクセス禁止法)▽電子計算機損壊等業務妨害罪(刑法)--なども適用される。

 ウェブサイトでのなりすましを防止するため、立候補届け出の際に、候補者、政党がそれぞれ1件のURLを届け出ることができるとした。各選管は、同URLを告示し、報道機関にも提供するほか、選管のウェブサイトに一覧を掲載する。

 ◇投票日のネット選挙運動は

 投票日当日は従来どおり、ウェブサイトの更新、電子メールの送信は禁止だが、掲載したままにしておくことはできる。

 ◇「ボット」を使うのは

 自動更新プログラム「bot(ボット)」を使って、選挙運動用の文書図画を頒布する場合、作成者による頒布とみなし、作成者の連絡先表示義務が生じる。ツイッターの場合は、ボットのアカウント名が連絡先とみなされる。事実に反した名前、身分を表示してボットを使った場合は、公職選挙法違反(氏名等の虚偽表示罪)にあたる。

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