マック赤坂さん:エリート商社マンから転身、10戦全敗

毎日新聞 2014年02月14日 10時09分(最終更新 02月14日 16時44分)

駅の改札付近で「スマイル」をふりまくマック赤坂さん。この日は女性のカツラ姿だった=東京都内で2014年2月5日、三木陽介撮影
駅の改札付近で「スマイル」をふりまくマック赤坂さん。この日は女性のカツラ姿だった=東京都内で2014年2月5日、三木陽介撮影

 東京都知事選は舛添要一氏(65)の大勝で終わった。連日メディアに取り上げられたのは「主要候補」だったが、候補者は16人いた。主要候補以外は「泡沫(ほうまつ)」とも皮肉られるが、それでも挑み続ける男がいる。マック赤坂さん(65)。「俺は泡じゃない。人間だ」。なぜ負けても負けても戦うのか−−。【三木陽介】

 都知事選が10回目の選挙だった。得票数1万5070。当選した舛添氏の140分の1しか獲得できなかった。これで10戦全敗。一夜明けた10日、マックさんは不機嫌だった。「10万票はいくと思っていたから、話にならない」

 毎回、政見放送が話題を呼ぶ。時にはスーパーマン、時にはガンジーをまねた姿で登場する。今回はエンゼル(天使)。5分30秒の持ち時間の大半は、自身が考案した、笑顔を美容や健康に役立てる「スマイルセラピー」のPRに費やす。「スマイル!」と叫び、踊る。政見というよりコントだ。

 選挙中の「遊説」に密着した。両手に赤色の誘導灯を持って立ち、笑顔をふりまくだけでほとんど口を開かない。政見放送の影響か、すぐに人だかりができたが、冷たい目で「絶対投票しねえ」と立ち去る若者もいた。

 本名、戸並誠。愛知県の進学校から京都大、卒業後は伊藤忠商事へ。「優秀な営業マンだった」(元同僚)が、48歳で退社した。「会社の権威を使わずに一人で前進する」と1998年に貿易会社を設立し、6年後には売上高20億円に成長させた。

 経歴と対照的な異色の選挙活動を展開するが、こんな公約も掲げる。<被爆国だからこそ、軍隊の無い完全永世中立国宣言する><投票を教育・勤労・納税に次ぐ国民の義務にする>……。

 しかし、街頭で「まじめ」に訴えても、誰も立ち止まらない。結局、選挙の勝敗を左右するのは組織であり、知名度という現実。「多数派に立ち向かうには、目立つしかない」。奇矯なパフォーマンスはそんな不条理への抵抗でもあるのだ。

 「あの人は今の政治や政治家にも不満があるんだと思う」。マックさんら泡沫候補の姿を追った映画「立候補」で、2013年の毎日映画コンクール・ドキュメンタリー映画賞を受賞した藤岡利充監督(37)は言う。

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