ネット選挙 ツイッター分析―毎日新聞・立命館大共同研究

ツイッターユーザーが話題にした政策テーマと政党名の関係

 政党名とともに話題にされた政策テーマをグラフに落とし込んだ。「原発」や「震災・復興」というツイートが集中したテーマが政党との関連が弱いことが明らかに。

 参院選で議論されそうな政策テーマについて、ツイッターの利用者はどんなつぶやきをしているのか。毎日新聞と立命館大が参院選の公示を前にスタートさせたネット選挙の共同研究では、「原発」と「震災・復興」への関心が高い一方、これらのキーワードが特定の政党に関連づけてつぶやかれることは少なく、ネット上の関心と政党側の発信がかみあっていないことがうかがわれた。

 ツイッター利用者のつぶやき集計には「NTTコム オンライン」社の分析ソフト「バズファインダー」を使用。政策テーマなど50のキーワードを設定し、6月21〜26日の6日間のつぶやき数や、同時につぶやかれた関連語を調べた。

 「原発」についてつぶやいたツイート数は26万9000件で、「震災・復興」「憲法・改憲」などが続いた。与党が安倍政権の成果としてアピールする「アベノミクス」は4万3000件、「景気」も2万5000件にとどまった。

 政党名と関連してつぶやかれている政策キーワードを調べたところ、自民党や生活の党、社民党は「憲法・改憲」が多かった。自民が改憲を掲げ、改憲に慎重な生活、明確に反対の社民とスタンスは違うが、ツイッター利用者は各党の主張に関心を持っているようだ。日本維新の会と社民は「消費税」、共産党は「景気」と一緒につぶやかれるケースが多かった。

 政党名と一緒につぶやかれる傾向の強いキーワードはその政党の近くに、傾向の弱いキーワードは遠くに置く方法でグラフ化してみた。「震災・復興」や「年金」と一緒につぶやかれている政党がほとんどないことが分かる。「年金」のつぶやき自体は4万2000件と少なくないが、年金一元化を訴える民主党の発信力が弱く、争点化できていないようだ。

 「原発」も政党名と関連づけてはあまりつぶやかれていない。安倍政権が進める「再稼働」や「輸出」などの言葉と一緒に話題にされる傾向はあることから、政治課題としては認識されているようだ。立候補予定者側のつぶやきでは、脱原発を主張する野党の発信上位を「原発」が占めたが、選挙の争点としては浸透していないと言えそうだ。

 ツイッター利用者の間で政党名がつぶやかれた件数を集計すると、民主が13万件を超えて最多だった。民主党政権の失敗や東京都議選の惨敗、安倍晋三首相に対する問責決議などで否定的に取り上げられた側面が強い。自民が約11万件、共産が約9万件で続き、4万件以下の他党を引き離している。維新や生活は、党幹部らがツイッター上で高い関心を集めているのとは対照的な結果となった。

毎日新聞 2013年06月29日 東京朝刊

ソーシャル分析グラフ

参院選期間中のツイッター分析

 ネット選挙が解禁された参院選で毎日新聞は立命館大と共同研究に取り組んだ。「自民党1強」の選挙戦にネット選挙が与えた影響は極めて限定的だったが、政治家と有権者の双方向対話が始まる兆しは確認できた。今後、各党・政治家が有権者との対話で日常的にネット活用を競い、政治と国民の距離が近づけばー。そんな期待を込めて共同研究の結果を報告する。

自民、民主、共産候補者のリツイートされた数と得票数の関係

 ネット活用選挙解禁は得票にどのような関係をもたらしたのか。ネット上で話題を集めた政党の「ネット効果」を探った。

投票を呼びかけるツイート数の推移

 投票を呼びかけるツイート数が参院選終盤に活発化する一方で、低投票率の懸念も強まっている。ネットでの呼びかけが投票に結びつくかが注目される。

ツイッター上での政党の影響度

 公示1週間で各党候補者のツイート数、リツイート数はどう変化しているのか。公示前の調査と同じ手法で計測してみた。共産党、自民党が順調に拡散する一方、民主党の「苦戦」が目立つ結果に。

候補者がツイートした主な単語とツイッターユーザーが政党名と一緒にツイートとした言葉

 参院選公示から1週間、候補者の発信とツイッターユーザーのツイートを比較した。期待された政策対話は起きず、候補者とユーザーのすれ違いが目立つ結果が浮かびあがる。

ツイッターユーザーが政党名と一緒にツイートした政策テーマ

 政党はツイッター上でどのように語られているか。ユーザーが政党と一緒にツイートした言葉から探る。

ツイッターユーザーの党首名つぶやき数(7月4日から9日集計)

 ツイッター定点観測。今回はツイッターユーザーによる各党党首名のつぶやき数を計測した。公示後、もっとも多くつぶやかれた党首は?

参院選公示日の「原発」ツイート拡散状況

 ツイッター上の関心が「原発」に集中する原因を探った。参院選公示日の4日は「原発」に関するツイートではリツイート(公式・非公式両方を含む)で3倍に増えたことが判明。特定の利用者間で拡散したことがうかがわれる。

政党別のツイッターフォロワー数と、FBの友達数+フォロワー数

 ツイッター定点観測。今回は、候補者のツイッターフォロワー数と、フェイスブック(FB)の友達数+フォロワー数を政党別に集計。両方とも自民がトップとなった。

ツイッターユーザーがつぶやいた政策キーワード

 ツイッター定点観測。ツイッターユーザーがつぶやいた政策キーワードを日別で集計した。予想通りトップは原発。他のキーワードとの差は?

ツイッターユーザーが話題にした政党

 ツイッターユーザーのつぶやき数をもとに政党や政策関連語の関心度を測る定点観測を開始。初回は主に政党に関連したつぶやき数の日別変化をみる。

世論調査とツイート 政策テーマで比較

 毎日新聞世論調査で聞いた重視する政策と、ほぼ同時期にツイートされた政策テーマを比較した。世論調査では6%だった原発がツイート数ではトップに。このズレが意味するものは…

ツイッター上での各党立候補予定者、政党幹部の影響力

 各政党候補者でツイッターを活用している議員、政党幹部をツイート数を「発信力」の指標、リツーイート数を「拡散力」の指標とし、グラフ化した。各党、ネット上での影響力は?

ツイッターユーザーが話題にした政策テーマと政党名の関係

 政党名とともに話題にされた政策テーマをグラフに落とし込んだ。「原発」や「震災・復興」というツイートが集中したテーマが政党との関連が弱いことが明らかに。

ツイッターユーザーが話題にした政党名

 投開票日1カ月前の6月21日〜26日にかけてつぶやきを分析したところ、民主がつぶやき数トップに。批判的なツイートか・・・

ツイッター分析関連ニュースアーカイブ一覧

<立命館大学 共同研究者>
 
西田亮介(にしだ・りょうすけ)
 
立命館大特別招聘准教授(情報社会論)。1983年生まれ。慶應義塾大大学院政策・メディア研究科修士課程修了。同後期博士課程単位取得退学。同助教、東洋大非常勤講師などを経て現職。著書に『ネット選挙—解禁がもたらす日本社会の変容』(東洋経済新報社)、共編著に『「統治」を創造する』(春秋社)。
 
 
<担当記者>
 
毎日新聞社の政治記者です。参院選で解禁される「ネット選挙」の記事を担当することになり、慌ててツイートを始めたところです。発信する内容は私的見解であり、会社を代表するものではありません。広島県出身。千葉県在住。広島カープと千葉ロッテを応援しています。
 
毎日新聞で記者をしています。仕事では主にリスクコミュニケーションに関心あり。なおここでの発言は会社と一切関係ありません。1984年生まれ。連絡はsatoruishido(at)gmail.com まで。 電子書籍にて「安心の風景—子どもと犯罪、ホントのところ」を発売中。
http://bit.ly/glH68H
http://twilog.org/satoruishido
 
<協力企業>
・インフォグラフィック作成 infogra.me
・NTTコム オンライン Twitter全量データを対象とする口コミリアルタイム分析ツール「BuzzFinder
・ツイッターでのつぶやいた政策関連語データ(ソーシャル政治新聞「ソーシャルタイムス」)

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