ネット選挙 ツイッター分析―毎日新聞・立命館大共同研究



自民、民主、共産候補者のリツイートされた数と得票数の関係

 ネット活用選挙解禁は得票にどのような関係をもたらしたのか。ネット上で話題を集めた政党の「ネット効果」を探った。

 参院選(7月4日公示、21日投開票)が自民党の大勝に終わったのを受け、毎日新聞と立命館大は、参院選で解禁されたインターネット選挙運動(ネット選挙)が当落に与えた影響を分析した。選挙区で2人しか落選しなかった自民党や、惨敗した民主党の候補者では、ネット上の運動量と得票数の間に相関は認められず、ネット選挙は大勢に影響しなかったと言える。ただ、改選3議席から8議席に躍進した共産党に限れば、組織的にツイッターを積極活用した「ネット効果」がデータに表れた。

 毎日新聞と立命館大のネット選挙共同研究では、ツイッター利用者と各党候補者の投稿(ツイート)を収集・分析し、選挙への影響を検証してきた。これまでに共産党候補者のツイートがツイッター利用者による引用・転送(リツイート=RT)によって効果的に拡散し、民主党候補者のツイートはRTによる拡散力が弱い傾向が判明している。

 共産党は12年ぶりに選挙区で議席を獲得。RT数が3万1000件に達した吉良佳子氏(東京)は70万票、2万5000件の辰巳孝太郎氏(大阪)も46万票を得た。落選者でもRT数1万件以上が4人おり、うち2人は得票数が25万票を上回った。比例当選者も2人がRT数1万件を超え、RTによる拡散力と得票数の相関が認められた。

 ただ、今回の参院選は当初から「自民党1強」の情勢が顕著で、ネット上の関心は低かった。自民党はRT数が4万件を超えた佐藤正久氏(比例)を例外に、多くの当選者が1000件以下。民主党はRT数が1万件を超えた候補はなく、最多の6700件だった鈴木寛氏(東京)が落選した一方、当選者のRT数は0?500件程度だった。諸派ではRT数が10万件を超えた比例候補3人が落選。ツイッター上の発信・拡散と当落を関連づけるデータは共産党を除き得られなかった。【石戸諭】

 賛否二分の政策 自民争点化回避「防御的に利用」

 組織力と資金力を背景にネット選挙の取り組みで他党を圧倒した自民党。平井卓也ネットメディア局長は「ディフェンシブ(防御的)に使った」と説明する。

 自民党は25社以上のネット業者からなるチームを組織し、ツイッターなどの書き込み情報を分析する「ソーシャルリスニング」を実施。全候補者にタブレット端末を配布し、演説のポイントなどをアドバイスした。例えば「原発再稼働」への反応が強いとみると、「推進」ではなく「原子力規制委員会が安全と認めないものは認めない」との表現を使うよう指導。「消費増税」など賛否の分かれる政策の争点化回避を図った。

 ネット選挙解禁でネットの双方向性を生かした有権者との政策対話が期待されたが、与党はそれを避け、民主党がアベノミクス批判などを発信してもネット利用者の反応は冷淡だった。

 対話が深まらない中、支持者を巻き込んでの組織戦にツイッターを活用したのが共産党だ。支持者向けガイドラインでは、気になるツイッター利用者100人をフォロー(閲覧登録)▽党機関紙「しんぶん赤旗」の記事を紹介??など活用方法を例示。小池晃副委員長は「対話の手段としてネットを捉えた」と語る。共産党の取り組みは今後のネット選挙を考える指針の一つになりそうだ。【影山哲也】

毎日新聞 2013年07月31日 東京朝刊

ソーシャル分析グラフ

参院選期間中のツイッター分析

 ネット選挙が解禁された参院選で毎日新聞は立命館大と共同研究に取り組んだ。「自民党1強」の選挙戦にネット選挙が与えた影響は極めて限定的だったが、政治家と有権者の双方向対話が始まる兆しは確認できた。今後、各党・政治家が有権者との対話で日常的にネット活用を競い、政治と国民の距離が近づけばー。そんな期待を込めて共同研究の結果を報告する。

自民、民主、共産候補者のリツイートされた数と得票数の関係

 ネット活用選挙解禁は得票にどのような関係をもたらしたのか。ネット上で話題を集めた政党の「ネット効果」を探った。

投票を呼びかけるツイート数の推移

 投票を呼びかけるツイート数が参院選終盤に活発化する一方で、低投票率の懸念も強まっている。ネットでの呼びかけが投票に結びつくかが注目される。

ツイッター上での政党の影響度

 公示1週間で各党候補者のツイート数、リツイート数はどう変化しているのか。公示前の調査と同じ手法で計測してみた。共産党、自民党が順調に拡散する一方、民主党の「苦戦」が目立つ結果に。

候補者がツイートした主な単語とツイッターユーザーが政党名と一緒にツイートとした言葉

 参院選公示から1週間、候補者の発信とツイッターユーザーのツイートを比較した。期待された政策対話は起きず、候補者とユーザーのすれ違いが目立つ結果が浮かびあがる。

ツイッターユーザーが政党名と一緒にツイートした政策テーマ

 政党はツイッター上でどのように語られているか。ユーザーが政党と一緒にツイートした言葉から探る。

ツイッターユーザーの党首名つぶやき数(7月4日から9日集計)

 ツイッター定点観測。今回はツイッターユーザーによる各党党首名のつぶやき数を計測した。公示後、もっとも多くつぶやかれた党首は?

参院選公示日の「原発」ツイート拡散状況

 ツイッター上の関心が「原発」に集中する原因を探った。参院選公示日の4日は「原発」に関するツイートではリツイート(公式・非公式両方を含む)で3倍に増えたことが判明。特定の利用者間で拡散したことがうかがわれる。

政党別のツイッターフォロワー数と、FBの友達数+フォロワー数

 ツイッター定点観測。今回は、候補者のツイッターフォロワー数と、フェイスブック(FB)の友達数+フォロワー数を政党別に集計。両方とも自民がトップとなった。

ツイッターユーザーがつぶやいた政策キーワード

 ツイッター定点観測。ツイッターユーザーがつぶやいた政策キーワードを日別で集計した。予想通りトップは原発。他のキーワードとの差は?

ツイッターユーザーが話題にした政党

 ツイッターユーザーのつぶやき数をもとに政党や政策関連語の関心度を測る定点観測を開始。初回は主に政党に関連したつぶやき数の日別変化をみる。

世論調査とツイート 政策テーマで比較

 毎日新聞世論調査で聞いた重視する政策と、ほぼ同時期にツイートされた政策テーマを比較した。世論調査では6%だった原発がツイート数ではトップに。このズレが意味するものは…

ツイッター上での各党立候補予定者、政党幹部の影響力

 各政党候補者でツイッターを活用している議員、政党幹部をツイート数を「発信力」の指標、リツーイート数を「拡散力」の指標とし、グラフ化した。各党、ネット上での影響力は?

ツイッターユーザーが話題にした政策テーマと政党名の関係

 政党名とともに話題にされた政策テーマをグラフに落とし込んだ。「原発」や「震災・復興」というツイートが集中したテーマが政党との関連が弱いことが明らかに。

ツイッターユーザーが話題にした政党名

 投開票日1カ月前の6月21日〜26日にかけてつぶやきを分析したところ、民主がつぶやき数トップに。批判的なツイートか・・・

ツイッター分析関連ニュースアーカイブ一覧

<立命館大学 共同研究者>
 
西田亮介(にしだ・りょうすけ)
 
立命館大特別招聘准教授(情報社会論)。1983年生まれ。慶應義塾大大学院政策・メディア研究科修士課程修了。同後期博士課程単位取得退学。同助教、東洋大非常勤講師などを経て現職。著書に『ネット選挙—解禁がもたらす日本社会の変容』(東洋経済新報社)、共編著に『「統治」を創造する』(春秋社)。
 
 
<担当記者>
 
毎日新聞社の政治記者です。参院選で解禁される「ネット選挙」の記事を担当することになり、慌ててツイートを始めたところです。発信する内容は私的見解であり、会社を代表するものではありません。広島県出身。千葉県在住。広島カープと千葉ロッテを応援しています。
 
毎日新聞で記者をしています。仕事では主にリスクコミュニケーションに関心あり。なおここでの発言は会社と一切関係ありません。1984年生まれ。連絡はsatoruishido(at)gmail.com まで。 電子書籍にて「安心の風景—子どもと犯罪、ホントのところ」を発売中。
http://bit.ly/glH68H
http://twilog.org/satoruishido
 
<協力企業>
・インフォグラフィック作成 infogra.me
・NTTコム オンライン Twitter全量データを対象とする口コミリアルタイム分析ツール「BuzzFinder
・ツイッターでのつぶやいた政策関連語データ(ソーシャル政治新聞「ソーシャルタイムス」)

最新写真特集