社説:参院選 問われるもの…社会保障

毎日新聞 2013年07月01日 02時31分

 ◇参院選 問われるもの…社会保障 争点にならない不実さ

 これだけ有権者の関心が高いのに社会保障の論争がかみ合わないのはなぜか。少子高齢化とは支える側が減り、支えられる側が増えることだ。年金や医療などの制度を持続させるには、負担を増やすか給付を減らすしかない。誰もが避けたがる話題である。だから論争がかみ合わない。

 これまでもずっとそうだった。無駄をなくせば財源などいくらでも出てくる、経済成長すれば税収は増える、もっとうまい制度改革があると選挙で論戦になったが、どれも実現できず、毎年10兆円も借金をしてきた。ツケを払うのは次世代だ。

 5%の消費増税でもまだ足りないと言われてはいるが、少なくとも「魔法のつえ」も「打ち出の小づち」もないという現実を民自公3党が認めたのが、税と社会保障の一体改革の重要な意味だ。参院選公約は政策の練度や社会観だけでなく、政権再交代後の各党の責任感や正直さを占うという点でも興味深い。

 高齢者医療の自己負担増、年金の支給減や支給開始年齢の引き上げなど高齢者の痛みを伴う改革案は3党の公約には見られない。8月までには社会保障制度改革国民会議が最終報告をまとめ、政府も医療・介護や年金の制度改革に着手することになる。公約に書いていないから、どのような改革をしてもしなくてもウソにはならないが、自公は政権政党として誠実な態度と言えるだろうか。高齢者は年々増え、高齢者ほど投票率が高いことを考えると、言いにくいのはわかる。だが有権者の強い関心を知りながら、これを避けたのでは選挙戦は盛り上がるわけがない。

 民主は3年余の政権で実現できなかった最低保障年金の創設など「バラ色」の社会保障拡充策をまた並べた。新たに消費税6〜7%分もの財源が必要な上、中間層は逆に負担が重くなることがわかり慌てて引っ込めた年金案である。財源や制度設計は相変わらず示していない。国民受けしそうなスローガンを並べ立てた豪華絢爛(けんらん)のマニフェストが、かえって反省や検証のない党内事情の深刻さを露呈しているように見えてしまう。

 各党に共通するのが、保育所の待機児童解消など子育て政策の拡充、女性の社会進出の促進などだ。自民は「社会のあらゆる分野で指導的地位に女性が占める割合を30%以上にする」など女性支援を強調するが、どのように実現するのかが示されているわけではない。

 女性の活力を成長に生かすというのであれば、専業主婦優遇の象徴である年金の第3号被保険者、税の配偶者控除はどうするのか。かけ声だけでは本気度は伝わってこない。

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