社説:視点・参院選 地方経済=論説委員・近藤伸二

毎日新聞 2013年07月14日 02時30分

 大阪では4月に「グランフロント大阪」、6月に「あべのハルカス」と市内中心部に大型施設が相次いで開業し、今も多くの入場客でにぎわう。この影響もあって、今月発表の路線価上昇率の全国トップ3を大阪が占めるなど明るい話題に沸くが、地域に多い中小企業には景気回復の実感はない。そんな大阪の視点で地方経済を見てみたい。

 安倍政権の経済政策「アベノミクス」効果で、全国的に景気回復の動きは広がっている。ただ、地域によって濃淡があり、円安の恩恵が大きい自動車産業を主力とする東海などに比べ、関西は出遅れ気味だ。

 特に、雇用や賃金への波及は鈍い。大阪市信用金庫がまとめた大阪府内の中小企業の夏のボーナス調査によると、「支給する」と回答した企業は50.1%にとどまった。この割合は6年ぶりに前年を上回ったものの、1998年に調査を開始して以来、2番目に低い水準だ。

 中小企業には、円安による原材料価格上昇や電気料金値上げなどが重くのしかかる。関西では、地域経済を引っ張ってきたパナソニックやシャープなど電機大手の経営悪化の影響も尾を引く。

 だが、関西のような大都市圏ではない地方はもっと厳しい状況にある。山口県周南市の中心商店街でつくる徳山商店連合協同組合では、94年に431店あった店舗が昨年は321店に減った。空き店舗率も昨年は17.7%となるなど「シャッター通り」化に歯止めが掛からず、中心商店街がある通りの路線価は前年より11.1%も下落した。

 景気回復の波に乗り遅れた地域や業種、企業にもアベノミクス効果を及ぼすには、成長戦略を各地域の実情に応じて進めていくことが重要になる。

 大阪では、税制優遇や規制緩和を行う「国家戦略特区」に期待する声が強い。参院選後に東京、大阪、愛知を含む数カ所が指定されるとみられており、大阪は先端医療の拠点づくりなどを進めたい考えだ。

 国家戦略特区について、自民党は公約で「各地域の取り組みを踏まえ、大胆な規制改革等を実行する」とうたう。大阪を地盤とする日本維新の会も、特区によりカジノやレジャー、ビジネスなどを含む施設「統合型リゾート」の実現を掲げる。

 民主党政権下の2011年にも「関西イノベーション国際戦略総合特区」が指定されたが、規制緩和が十分に進められたとは言えない。地元の声を取り入れ、使い勝手のいい制度にしなければ、看板を付け替えるだけに終わってしまいかねない。

最新写真特集