社説:視点・参院選 民主党=論説委員・松田喬和

毎日新聞 2013年07月17日 02時30分

 ◇自民との違いを鮮明に

 終盤戦に向かいつつある参院選だが、本紙の「与党過半数の勢い」をはじめマスコミ各社の事前の世論調査は、ほぼ同じような傾向を示している。有権者の関心も薄れ、低投票率が懸念される。政権の座を明け渡した民主党は、巻き返し策を率先して模索すべきだ。

 政治改革の下、衆院に小選挙区比例代表並立制が導入された。政権交代可能な2大政党出現を促進させ、緊張感ある政治状況を作り出すのが狙いだった。制度設計通り、2009年には、民主党政権が誕生した。だが、昨年の総選挙では、自民党が政権奪還を果たすが、想定外の「第三極」政党が台頭した。

 先の東京都議選で、躍進したのは自民、公明、共産各党だった。公明党は国政同様、都政でも自民党とは協力関係にある。逆に共産党は対立関係が明確だ。ところが、参院選での対安倍政権への民主党の立ち位置は不鮮明だ。2大政党化の中で見られた与党の衆院選、参院選の連勝をけん制する有権者の「チェック・バランス」心理も今回は希薄のようだ。

 高度成長期は「分配の政治」が主流だった。自民党政権は地方にも配慮した「国土の均衡ある発展」に主眼を置いた。しかし、バブル崩壊で旧来の方法での原資の調達が難しくなり、「分担の政治」に転換せざるを得なくなっている。消費税引き上げとともに社会保障との「一体改革」に賛成したはずの民主、自民、公明3党だけでなく、多くの党が、参院選では財源を明確にすることなく給付の拡大をうたうばかりだ。

 選挙の勝敗のみを基準とした政策に、有権者も戸惑いを見せている。本紙の世論調査でも、78%が景気回復の実感はないと回答したものの、「アベノミクス」といわれる安倍晋三首相の経済政策には、半数が期待を寄せた。一見矛盾する回答を生み出したのは民主党をはじめとする野党が、代わるべき政策を提示できないからだろう。

 自民党長期政権を可能にした要因の一つは「振り子の原理」だった。派閥間の政権たらい回しを、疑似政権交代に仕立てた。だが、派閥解消、小選挙区制導入に加え、高い「安倍人気」で、党内の反安倍勢力は沈静化したまま。結束力を増した半面、「デパート政党」としての多様性には欠け、野党が対抗できる余地も生じている。

 野党各党は自民党との違いを鮮明にし、政権構想を探求すべきだ。その上で、「分担の政治」にかじを切り、誰もが「自助」と「公助」に目安を付けられる政治への転進を求めたい。

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