ネット選挙 ツイッター分析―毎日新聞・立命館大共同研究
参院選からネット選挙が解禁されるのに当たり、毎日新聞は立命館大の西田亮介・特別招聘准教授(社会学、ツイッターアカウント:@Ryosuke_Nishida)との共同研究プロジェクトをスタートさせました。政党・政治家や有権者のつぶやきを分析するとともに、従来型の世論調査も駆使し、「ネット選挙解禁で日本の政治は変わるのか」を探ります。
世論調査とツイート 政策テーマで比較
毎日新聞世論調査で聞いた重視する政策と、ほぼ同時期にツイートされた政策テーマを比較した。世論調査では6%だった原発がツイート数ではトップに。このズレが意味するものは…
毎日新聞と立命館大(西田亮介特別招聘(しょうへい)准教授)は30日、参院選へ向けたネット選挙共同研究の一環として、電話による全国世論調査とツイッター利用者の投稿(ツイート)内容を比較した。参院選で重視する政策を世論調査で聞いたところ、回答者の32%が「年金・医療・介護・子育て」を選び、「景気対策」が25%。ツイッター上では「原発」「震災・復興」への関心が高く、世論調査結果と「ネット世論」のズレが浮かび上がった。【石戸諭】
共同研究では参院選で議論されそうな政策テーマを中心に50のキーワードを設定し、28、29両日、「NTTコム オンライン」社の分析ソフト「バズファインダー」でツイッター上のつぶやき数を集計した(1000未満切り捨て)。
ツイッターのつぶやき数は母数がはっきりしないためパーセントでの数値化は難しいが、「原発」のつぶやき数が9万件と群を抜いて多く、続いて「震災・復興」が4万2000件、「憲法・改憲」が3万1000件に達した。一方、世論調査で「原発・エネルギー政策」を選んだ人は6%、「東日本大震災からの復興」は7%、「憲法改正」も6%にとどまった。
ツイッター上でも「年金・子育て」のつぶやきが2万9000件、「景気・アベノミクス」も2万3000件と、関心が低いわけではない。生活に身近な話題より、原発などの政治的な対立の大きいテーマに関心が集まる傾向があるようだ。
先週は鳩山由紀夫元首相が沖縄・尖閣諸島について「中国側から『日本が盗んだ』と思われても仕方がない」などと発言した問題がツイッター上でも話題になり、「尖閣」のつぶやき数が2日間の集計で3万件に達した。「北朝鮮」と合わせると4万2000件。世論調査の回答で「外交・安全保障」が6%だったことと比較しても、温度差があると言えそうだ。
◇ネット選挙、変化なし54%
毎日新聞の世論調査では、インターネットを使った選挙運動(ネット選挙)が参院選で解禁されることについても質問した。「解禁によって日本の政治が変わると思う」との回答は39%で、「思わない」の54%を下回った。安倍内閣を支持する層は「思う」が44%だったのに対し、支持しない層は32%と差がみられた。
◇ツイッター、対立テーマに集中 気軽に転送、偏り生む−−西田亮介・立命館大特別招聘准教授(情報社会論)の話
世論調査をみると、「年金・医療・介護・子育て」といった社会保障系の政策や、景気問題のように有権者の生活に密着している政策を重視する傾向がうかがえる。
それに対し、ツイッターでは原発問題や安全保障、憲法改正のような左右の対立がはっきりし、賛否が二分する話題にツイートが集中していることが特徴だろう。背景に考えられるのはリツイート(転送)がすぐできるなど、情報拡散にかかるコストが低いことだ。そこに、ツイッター上でのコミュニケーション特有の偏りが生まれる原因があるのではないかと推測できる。選挙期間中に行われる世論調査の動向を引き続き注視し、ネット世論の特徴を探っていきたい。
毎日新聞 2013年07月01日 東京朝刊