インターネットを利用した選挙運動(ネット選挙)が解禁されて初めてとなった今回の衆院選で、ツイッター利用者とのやり取りが最も目立ったのが安倍晋三首相だ。
毎日新聞と立命館大(西田亮介・特別招聘(しょうへい)准教授)の「インターネットと政治」共同研究では小野塚亮・慶応大SFC研究所上席所員の協力を得て、投開票日前日までの1週間(7〜13日)、ツイッター利用者から候補者に送られたメッセージ(メンション)1万8052件を収集・分析した。そのうち3487件が安倍首相宛てで、首相を除く自民党候補者の合計2411件を大きく上回り、民主党全体の4028件に迫る。
著名な党幹部以外では、ツイッターを選挙運動に積極活用した共産党から池内沙織氏(比例東京ブロック)が417件で全当選者の4番目に入った。200件で10位だった民主党の山井和則氏(京都6区)は「障害」「介護」など医療・福祉分野の政策を発信。ツイート1回当たり平均60回転送(リツイート)されるなど、インターネットの双方向性を生かした政策対話の可能性を示した。
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立命館大との共同研究は石戸諭(デジタル報道センター)、大隈慎吾(世論調査室)、平田崇浩、笈田直樹(以上政治部)が担当しました。
◇発信の質が問われる
インターネットを使った選挙運動解禁で期待されたのは、ネットの透明性と双方向性が政治に持ち込まれることだった。選挙に限らず、いまの政治は閉鎖的で、ネットは使われてはいるが、一方的な発信がまだまだ主流だ。政治的な意思決定の前提として、政治家側から多様な情報発信がなされる必要がある。問われるのはネットの活用術ではなく、発信の質だろう。
政策的な発信は相変わらず乏しいが、政治家個人の資質だけでなく、制約の多い選挙制度の問題もある。有権者と政治のダイナミックな議論を促進するような制度改革も求められる。その先に、イメージの打ち出しに頼らない、政策対話の可能な政治の土壌がつくられることを期待する。
毎日新聞 2014年12月20日 東京朝刊