ネット選挙 ツイッター分析―毎日新聞・立命館大共同研究
参院選からネット選挙が解禁されるのに当たり、毎日新聞は立命館大の西田亮介・特別招聘准教授(社会学、ツイッターアカウント:@Ryosuke_Nishida)との共同研究プロジェクトをスタートさせました。政党・政治家や有権者のつぶやきを分析するとともに、従来型の世論調査も駆使し、「ネット選挙解禁で日本の政治は変わるのか」を探ります。
参院選公示日の「原発」ツイート拡散状況
ツイッター上の関心が「原発」に集中する原因を探った。参院選公示日の4日は「原発」に関するツイートではリツイート(公式・非公式両方を含む)で3倍に増えたことが判明。特定の利用者間で拡散したことがうかがわれる。
毎日新聞と立命館大(西田亮介特別招聘(しょうへい)准教授)はネット選挙共同研究の一環として、ツイッター上でつぶやかれる政策関連語のうち「原発」の投稿(ツイート)数が突出して多い原因を探った。参院選が公示された7月4日のツイートを分析したところ、他者のツイートを転送・引用するリツイート(RT)機能によって拡散する度合いが大きく、特定のツイッター利用者が集中的にRTしていることが確認された。
共同研究では「NTTコム オンライン」社の分析ツール「バズファインダー」を使い、ツイッター利用者の4日のツイートから政策関連語を含むものを収集・分析した。
◇オリジナルの3倍に
そのうち「原発」を含むツイート数は5万5100件(100未満切り捨て)。RTを除いたオリジナルツイートは1万8600件(投稿者数9100人)、RT数は3万6500件(1万6500人)だった。オリジナルツイートの多くは投稿者が自らの意見を発信したものと考えられ、平均すると1人2件程度。その2倍近い人数が1人平均2件以上をRTした計算になる。オリジナルツイートとRTの投稿者が重なっている可能性もあり、「原発」に関心を持つ個人や団体など特定の層がRTを繰り返し、オリジナルの3倍にツイート数が膨らんだことがうかがわれる。
毎日新聞が4、5両日、全国の有権者約3万人を対象に電話で実施した参院選の特別世論調査で重視する争点を聞いたところ、「年金・医療・介護・子育て」と「景気対策」が28%で並んでトップ。「原発・エネルギー政策」は8%にとどまった。ネット利用者が多いとされる20〜30代でもこの傾向は変わらず、「原発・エネルギー政策」は5%とむしろ少なかった。
4日のツイッター上では「年金・子育て」のツイート数が1万9800件。このうちオリジナルツイートは1万件(7400人)、RTは9800件(6400人)だった。「原発」と比べると、オリジナルツイート数も少ないが、RTによる拡散の度合いが小さく、オリジナルツイート数の差以上に総ツイート数の格差が広がっている。
「原発」に関してはフォロワー(読者)が10万人以上いる著名人らが賛否それぞれの意見を活発に発信しているほか、首相官邸前の再稼働反対デモがツイッターなどを通じて拡大した経緯もある。そうしたつながりが特定の利用者間に生まれ、RTによって拡散しやすい傾向にあると考えられる。【石戸諭】
毎日新聞 2013年07月09日 東京朝刊